VAR(ベクトル自己回帰)で非農業部門雇用者数を予測する

概要

・計量経済学の俺様メモシリーズ VAR編
・ADP雇用者数(以下ADP)と非農業部門雇用者数(以下NFP)を使って次期のNFPを予測したい

はじめに

米労働省が月初第一金曜日に発表するNFP(いわゆる雇用統計)の増加分を予測したい.
FRB(アメリカの中央銀行のようなもの)は物価の安定と同時に,雇用最大化もマンデートとしているため,雇用者数の増加分というのは金融政策にも影響を与える.それを事前に予測できればお小遣いくらいは稼げるかもしれない

使うデータ

1. ADP雇用者数
これは民間会社であるADPが算出・公表しているデータ.月初第一水曜日に公表される

ADP全国雇用者数とは|金融経済用語集
http://www.ifinance.ne.jp/glossary/economy/eco028.html

2. NFP
米労働省が公表しているデータ.月初第一金曜日に公表される.

2つのデータは基本的には同じものを算出しているがADPのほうが2営業日前に公表される.
マーケットもADPをNFPの前哨戦と位置づけていることが多い.

データの取得

セントルイス連銀先生からデータを取得します.

ADPはこちらから,
Total Nonfarm Private Payroll Employment (NPPTTL) – FRED – St. Louis Fed
http://research.stlouisfed.org/fred2/series/NPPTTL?cid=32305

NFPはこちらから,
All Employees: Total nonfarm (PAYEMS) – FRED – St. Louis Fed
http://research.stlouisfed.org/fred2/series/PAYEMS?cid=32305

ページ左側の「Download Data」というところから取得できるかと思います.

Rで読み込み,グラフ描画

上記サイトから取得できる系列は,『当月時点での雇用者数』である一方,実際にマーケットから注目されているのは『当月での雇用者数の変化分』ということなので,diffを取る必要があります.

ADPの方がデータが新しく,2001年4月以降のデータがありませんので,diffが取れるのは2001年5月からということになります.
適当にRで読み込み,diffをとってグラフを描画すると以下のような感じ

140112_1

黒い線がADPで,赤い線がNFPです.
(2013年12月分を予測したいので2013年11月分までしか描画していません)
まあ大体(?)同じような動きをしておりますし,もしかしたら予測力があるかもしれませんよ!!

VARモデル満を持して登場

VARはどこかの偉い方が既にパッケージ(varsライブラリ)として配布されておりますのでそれを利用させて頂きます.
ちなみにドキュメントはこちら
http://cran.r-project.org/web/packages/vars/vars.pdf

ということでライブラリをロードして,まずはVARの次数を推定してみます.
VARselect第一引数はADP変化とNFP変化をデータフレームに打ち込んだものとなっておりまして,一応中身としては

となっております.
また,モデルのタイプはとりあえず定数ベクトルだけを入れたシンプルなもので,
AR過程のベクトル版ですな.VAR(1)だと以下のような形

$$
\left(
\begin{array}{c}
y_{1,t} \\
y_{2,t} \\
\end{array}
\right)
=
\left(
\begin{array}{c}
c_1 \\
c_1 \\
\end{array}
\right)
+
\left(
\begin{array}{cc}
b_{11} & b_{12} \\
b_{21} & b_{22} \\
\end{array}
\right)
\left(
\begin{array}{c}
y_{1, t-1} \\
y_{2, t-1} \\
\end{array}
\right)
+
\left(
\begin{array}{c}
\epsilon_{1, t} \\
\epsilon_{2, t} \\
\end{array}
\right)
$$

で,varselectを実行すると

とまあ色々な基準で次数を選んでくれます.$selectionの部分がそれぞれの基準での次数となっておりまして,どれも次数1となっております.したがって上述したVAR(1)ということですね.

さて,この式を使って12月分の予測もしてみます.

まず1行目でVARモデルの実行.第2引数は先ほど推定した次数,第3引数はモデルの形ということで定数込のモデルを指定します.
で,predict関数で1期先までを推定.

実行すると以下のような結果が返ってきます.
見づらいですがfcst(forecast)の値が予測値となります.
lowerとupperは信頼区間(デフォルトでは95%),CIはドキュメントには記載が無いように見えましたがfcstから信頼区間上限・下限までの距離ですかな.

ということで,12月分ADPは223.152千人(単位は千人です),NFPは225.7227千人となります.

実際どうなのよ

まずADPの12月分はどうなったかと言いますと,

ADP National Employment Report | NER
http://www.adpemploymentreport.com/

140112_2

ということで238,000(var予測は223,152)となりました.
まあこんなもんですかなあ(― ―)??

で,問題のNFP12月分

U.S. Bureau of Labor Statistics
http://www.bls.gov/

140112_3

( ゚д゚) ・・・

(つд⊂)ゴシゴシ

(;゚д゚) ・・・

(つд⊂)ゴシゴシゴシ

(;゚Д゚) …74,000!?

というわけで,全然当たりませんでした笑(var予測は225,722.7)

ちなみに

2月第一金曜日に公表される1月分の予測もしてみます.

ということでADPは217k, NFPは231kがVARモデルによる予測となります.

ちなみに2

今回の予測は厳密には正しくありません.
というのも12月NFPが公表された時に11月NFPも修正されているのですが,今回は11月の修正後のデータを使って12月分を予測しているためです.
当然12月分が公表される前の時点では,11月分の修正分も知ることはできません.

ただし最後に行なった1月分の予測に関しては,現時点で収集できるデータのみを使っているのでデータの観点からは正しいかと思います.

ちなみに3

今回は11月分までのADP,NFPの値を使って,12月分のADP,NFPを予測しました.
ですが,マーケットの注目度は断然NFPの方が高く,マーケットの反応も一般的にはNFPの方に大きく影響されています.
なので,12月ADPも観測した上で,NFP12月分だけを予測するという方法も考えられますので誰かやってみてください(他力本願)

参考文献

経済・ファイナンスデータの計量時系列分析 (統計ライブラリー): 沖本 竜義: 本 – http://www.amazon.co.jp/dp/4254127928